もし、日本の原発で直下地震が起きたら…(山崎久隆さん)

(たんぽぽ舎メールニュースより転載)

たんぽぽ舎です。【TMM:No1010】
                       転送歓迎です

山崎久隆です。

   ☆★ニュージーランドの地震で読み解く教訓★☆

見落とされている視点・もし、日本で原発の真下で直下地震が起きたら…


ニュージーランドは紛れもない「地震国」だが「備えのある」地震国であった
はずだ。プレート境界上に位置する列島ということでは、日本と全く同じ。
しかし現実には「わずか」マグニチュード6.3の地震で、三桁の死者・行方不明者
(2月24日現在)を出す大惨事になった。「備え」のどこかにほころびがあった
ことは間違いない。
 人間は現在も地震を「知って」などいない。中規模以上の地震が起こるたびに
「意外な」「予想もしない」「不意を突かれた」災害に見舞われる。それが「資金も
無く、知識も無い」国だけでは無く、十分な知見も資金もある国でも、同じだ。
 今回のニュージーランド第二の都市を襲った「2011カンタベリー地震」は、私
たちに何を教えているのだろう。一人でも多くの人が出来るだけ早く救出される
よう祈りながら、考えてみた。


 ニュージーランド(以下NZ)の地震のニュースが多く流れています。
震源が5キロ程度と浅く、大きな被害が出ています。
最大の被害が出ているクライストチャーチはガーデンシティと呼ばれるニュージ
ーランドの第二の都市で人口約37万6千人、南島では最大の都市。2月22日
午後12時50分にマグニチュード6.3(リヒタースケール)の地震がクライストチャーチ
の南東10キロ付近を震源として発生しました。

米地質調査所のデータです。
USGS
M 6.3, South Island of New Zealand
Date:   Monday, February 21, 2011 23:51:43 UTC
Tuesday, February 22, 2011 12:51:43 PM at epicenter
Depth:  5.00 km (3.11 mi)

 ニュージーランドの最大の地震は256人が死亡した1931年のホーク湾地震です。
1968年には7.1の地震が起きていますが、このときは3人が死亡しています。
 昨年9月にはマグニチュード7(モーメントマグニチュード)の2010カンタベ
リー地震(2010年9月4日午前4時35分・震源深さ11キロ、クライストチャーチ
の西40キロ)が今回の震源から100キロほど東で起きています。(ジオネットより)
 この地震では死者はありません。従って、今回の地震はNZにとって1968年以
来の死者を伴う地震災害です。

 今回は大都市の直下で起きたという意味では、阪神淡路大震災と同様の震災を
もたらしたと思われます。ニュージーランド史上最悪の地震災害になる可能性も
あります。
ジオネットのデータには各地の観測値を表す情報がありました。
http://www.geonet.org.nz/var/storage/images/media/images/news/2011/lyttelton_pga/57159-2-eng-GB/lyttelton_pga.png

 地震加速度については、ジオネットのデータを見ると、2200ガルというのが最
も大きな数値です。
なお、このページのデータは「220.3%g」つまり重力加速度gの何パーセント
という表記なので換算しています。(2月21日23時51分現在のデータです。今後
も更新される可能性があります)

 震央から5キロ程度と思われる港町リトルトンでは、937ガル、3キロ北側に
は最大の2200ガルというデータがあります。また市街地で最大加速度の1850ガル
を記録した地点から北には1052ガルというデータがあります。これら強震動を観
測した地点が北から南方向にほぼ一直線に並んでいますので、この方向に強力な
地震動を生じさせた断層運動があったのだろうと思います。非常に狭い範囲で
強震動が発生していたことが分かります。2200ガルの地点から1850ガルの地点まで
はほぼ5キロ離れています。ここはエイボン川のポンプステーションだそうです。
この場所から937ガルのリトルトンまでは約10キロ。この間が震度8以上を記録
した地帯と思われます。

 なお、NZの地震階は12段階(改正メルカリ震度階)です。今回の最大震度は
震度階9または10(恐慌状態、石造建築は深刻な被害を受け、あるものは倒壊する。
家が基礎から動くこともある)に達したと思われます。なお、これは気象庁震度階で
6弱から7に相当します。
 大聖堂はクライストチャーチの本当に真ん中にありますが、この地点の揺れは
市内でも大きな揺れを観測していて、付近の記録から見れば800ガル程度はあっ
たものと見られます。

国道74号に沿うように強震動地帯があるように見えます。これは阪神淡路大震災
と同様の「強震動の帯」があるようです。
なお、知られているプレート境界の位置は市の北側郊外なので、これが動いたの
ではなさそうです。
 震源が浅いことから、周期0.1秒から0.3秒程度の短い波の地震波が非常に強い
パルス状となりほとんど減衰しないで建物を破壊したように思います。

*今回の地震が注目されているのは、日本人の行方不明者が多数出ていることと
在住者が非常に多いことに尽きると思います。NZの地震としては最大ではない
ですが、人的被害では最大になる可能性はあります。とはいえ、プレート境界に
ある列島としては「標準的」な規模の地震です。被害が多かったのは大都市直下
であったからです。大都市であるから人が多く、発生時刻が昼時なので都市部の
人口はピークで、さらに多数の建築物に大勢の人が居るため、その中には耐震性
の低いものもあり、これらの倒壊により中にいる人はもちろん、路上の人にも重
大な被害を与える確率が飛躍的に高くなります。

 もう一つ注目すべきことは、この地震が2010年9月に起きたカンタベリー地震
の最大余震である可能性があることです。五ヶ月後の最大余震が最も大きな災害
を引き起こしたとすれば、いままで考えられていた地震の危険性評価を考え直さ
なければならないのではないか、そういう問題提起と言えるのです。

 余震は地震の規模にもよりますが内陸直下型のマグニチュード7以下であれば
一般に本震の後一ヶ月程度で終息し、その後は復旧活動に集中できることが多い
のですが、五ヶ月後に最大余震が来ることもあるとなれば、前回の地震により一
定以上の被害を受けた建築物は使用禁止とすべきですし、補修だけで無く耐震補
強を資金を集中投入してでも行う必要があります。

 もっとも、このような最大地震が起きること自体が予想外であるはずはなく、
予想の範囲だったけれども、これまでは実際に大規模な災害になるといった実例
がほとんどなかったため想定外になっていただけとも言えます。


 さて、こういう地震が起きたときに、一番真剣に考えなければ
 ならないのは原発などの重要危険設備の耐震安全性に問題が
 ないかということですが、ものすごい大問題をかかえています。

 こういうシミュレーションが必要だと思います。
例えば各地の原発などで中越沖地震で揺さぶられた直後に、今回のクライストチ
ャーチの地震波を入力しても「閉じ込める」機能は維持できて「冷やす」ことが
可能かどうか。
東京大地震研究所の纐纈一起教授は「今回のような地震は日本中何処で起きても
おかしくない」と言い切りました。つまり原発直下で起きてもおかしくないわけ
です。
 今回の地震については、ニュージーランドの地震なのでマグニチュード6.3の
地震というのはリヒタースケールです。日本で使われる気象庁マグニチュードに
するとたぶん6.5を下回るくらいになるのではないかと思います。
 ただし、マグニチュードの基準が違うと比較できません。国際的によく使われ
るマグニチュードに「モーメントマグニチュード」という物差しがあります。
これで表すと今回の「2011カンタベリー地震」はマグニチュード6.07から6.1と
評価されています。
(東大地震研究所http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/eqvolc/201009_nz/#20110222EQ)

 兵庫県南部地震も気象庁マグニチュードでは7.3ですが、モーメントマグニチ
ュードでは6.9です。ここから比較すると、6.1の地震と6.9の地震の規模の差は
0.8すなわち約16倍程度と考えられます。
 原発が想定する「最低限の」地震と同程度が起きたという意味では、やはり指
標的な意味を持つと同時に、マグニチュード7の2010カンタベリー地震、これは
いわば兵庫県南部地震級ですが、これの最大余震に今回程度の地震が直下で起こ
りうるとしたら、どういった被害をもたらすのか、誰も計算していないことを今
させる必要があるのではないかと思います。
もちろんのこと、これは「最低限」です。

 日本で最も大きな地震災害を引き起こすと考えられている、日本列島の太平洋
側で静岡県富士川河口付近から遠く高知沖を抜けて九州に達する「東海、東南海、
南海地震」の連動発生において予想される地震はマグニチュード8.6(1707年宝
永地震)、その最大余震は今回の地震よりももっと遙かに大きなものだと思いま
すから、浜岡などは遙かに巨大な最大余震を含めた解析が必要です。
 その他の原発でも、基準地震動Ss(*)の後に、大きな余震を想定して、施
設設備の一部が破壊された後に大きな余震で再度打撃を受けることを想定しなけ
ればならないということです。

 よく言われる説明に「包絡(ほうらく)している」という言葉があります。つ
まり耐震計算上Ssを想定していればそれ以下の地震に対しても十分持つという
「一見正しそうな」主張です。しかし実際に起きていることは、Ssにさえ達し
ない遙かに小さい地震でさえ、重大な設備の損傷があり、さらにその後にSsが
襲ってくる(この場合は最初の地震は「前震」です)とか、またはSsに達しな
い地震でも損傷を受けた後に繰り返し襲ってくるということです。つまり問題は
「現実にも十分起こりえること」が想定がされていないことです。

 ニュージーランドには原発がありませんので、そのような観点からの現地報道
はありません。それをいいことに、国や電力はこの地震と原発耐震性の問題点を
結びつけるような「まともな」議論はしないと思いますから、問題提起は大事に
なると思います。

(*)基準地震動Ss:2007年9月に改定された「耐震設計審査指針」において、
それまでの「設計用限界地震」「設計用最強地震」に変わり、過去の歴史や周辺
地域の地震地帯構造で起こりえると考えられる耐震設計用の最大地震を想定し、
それらの地震により発生する地震動を仮想的な地震として耐震評価計算に使う。

 


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