「被ばく労働を考えるネットワーク」の取り組み(11月25日、いわき)

「被ばく労働を考えるネットワーク」の取り組み第一弾
いわき市で講演会・相談会を開催

(中村泰子)


十一月二十五日、いわき市健康・福祉プラザゆったり館にて「放射能汚染下で働き、暮らすこと―講演会・相談会」が行われた。相談会は、労働相談・健康相談(鍼灸治療含む)・生活相談の三分野に分けて行われ、労働:一件、健康:四件、生活:一件の相談があった。また、講演会は、村田三郎先生(阪南中央病院副院長)が「労働者被ばくと健康影響」について講演し質疑応答が行われた。


労働者の訴えを聞く場を築くために

労働相談の内容は、危険手当ピンハネ問題であった。訪れたのは、青森から福島へ除染作業に来ていた三次下請けの労働者五人。除染特別地域(警戒区域と計画的避難区域)での作業は環境省から危険手当が一日一万円支払われる。彼らは九月から約二カ月、除染特別区域で作業したにもかかわらず、日当一万一千円だけで手当は全く支払われず、放射能防護服はなし、マスクも交通費も健康診断も除染の講習も自費、宿泊はタコ部屋にすし詰めだと訴えた。「朝礼でマスコミとは口をきかないようにといわれ何かあやしいと思った。危険手当のことは除染の講習で知った。支払いを要求したい」と相談した。

本ネットワークが取り組んだ楢葉町における危険手当ピンハネ等労働争議(前号No903参照)は、十一月十五日にほぼ全面勝利し、要求していた労働債権が当該労働者に支払われた。相談員側は、要求は上位企業へ話を持ち上げることで確実に通ること、健康診断、除染講習など仕事にかかわる費用も環境省が元請け業者に支払っているので、自己負担させられた分も請求できること、健康診断やホールボディカウンター測定を受けた日も労働日なので賃金を請求できることなどを話した。この件で要求を勝ち取れば、一緒に働いていた八百人の労働者にも権利があることを知らせ、同様に適用されることにつながるので、ともに頑張ろうと励ました。

彼らはここにたどりつくまでに四箇所をたずねまわったという。労基署にも相談したが環境省に直接相談しろと言われたとのこと。労働者の訴えを聞く場がいかに少ないかを表している。本ネットワークの存在はまだまだ知られていないが、労働者の声を受け止め一緒に闘う場としての役割を果たすようネットワーク参加者として努力したいと思った。

労働者を切り捨て、責任をあいまいにするやり口

講演会は、参加者一六〇名で会場は超満員となった。講師の村田三郎先生は、福島原発震災後の労働者のすさまじい被ばく、線量限度とは安全線量ではなく、原子力推進のためのがまん線量であること、被ばく労働者の健康管理・補償はどうあるべきかなどについて話した。

「事故収束作業にかかわった作業員の身元(行方)不明者が昨年八月時点で一四〇人以上、現在も十数人いる。彼らは、管理責任が不明確なところで高被ばく線量の仕事を強いられ、データを消された下請け労働者ではないかと思う。正社員(電力労連)にはさせたくない危険な作業を安い賃金で請け負ってくれ、将来の補償も必要なくなるので、東電にとって好都合だ。被ばくの責任をあいまいにするための体制として多重下請け構造がある。」

「政府の昨年十二月の事故収束宣言後、収束作業の危険手当がなくなり、被ばく防護対策が軽くなり、線量測定の回数が減らされるなど、労働者の健康と生活が脅かされている。」

「除染作業に従事する人は被災した住民も多い。住民のもとの生活に戻りたい気持ちと生活手段・仕事を奪われた現実の足元を見て、住民をほとんど無防備なまま内部被ばくの危険性の高い作業に動員している。結局は事故発生責任と補償責任をあいまいにすることにつながる」など、問題点を指摘した。

そして、被ばく労働をなくすためには核・原子力との共存をやめるしかないと結んだ。

もし、収束作業をする人がいなければ、わたしたちの命は危険にさらされる。わたしたちの命にかかわる仕事をする人たちが、多重下請けという差別構造のもとで声をあげられない。わたしたちはこの問題の当事者として、この差別構造をなくす努力をしなければならない。労働者、住民とつながって、ともに闘うことが求められていると思う。



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